治療紹介インプラント

インプラント

2025年1月20日

左側の顎関節の痛みが酷く食事ができない/眠れない症例

術前CT

【患者様に関する情報】
・55歳女性
・ご来院時の口腔内は上下顎共にほぼ抜髄されている状態。
・前歯部が痺れる症状あり
・左側の頬・首・頭が痛い
・左側の顎の関節が痛くて食事ができない
・痛みで夜も眠れない

初診時の状態(2020年8月に来院)

CT画像より左上7が欠損していました。
また、右側にインプラントがあり噛める状態のため右噛みの状態でした。

顎関節CT画像の矢状断面

顎関節CTの矢状断面

右関節の関節空隙(関節窩と関節頭の間の空間)のすき間がない状態です。
関節頭の外側と内側には外形ラインに白い線が見えると思います。
通常は皮質骨(ひしつこつ)という硬い骨で覆われているのですが、右側の関節の状態を見てみると、関節頭の頭頂部の表面の皮質骨が消失して外形の白い線が消えているのが認められます。
左側は逆に関節窩から関節頭が下方に外れている状態です。これにより左側に痛みが出ていると考えられます。

〈顎関節の矢状断面の上記から分かること〉
右噛みになっているということは、右の関節は上に強い力で圧迫されていきます。
そのため圧迫された部分の骨が溶けてしまっています。
逆に左側は、顎を右に動かそうとすると関節包の中の軟組織に炎症が起こっていると考えられます。
そのために食事時に開口して右で噛もうとすると痛みが伴い口が開けられない状態になっています。

顎関節CT画像の前頭断面

顎関節CTの前頭断面

右側の関節について、慢性的に圧が掛かる部分の骨が吸収しているのが確認できます。
左側の関節空隙は拡大を認める一方、関節腔内が少し白く濁っているのが確認できるかと思います。
また関節上部に骨棘(とげ)を認めます。食事時に顎を動かすと骨棘が関節腔内の軟組織を刺激します。そのことによって、関節腔内に炎症が起こり、それが左関節の痛みとなって症状が現れているようです。

↓骨棘の部分
前頭断面拡大写真

初診時に左右関節に異常を認めるため、
初期の段階でマウスピースを入れることによって、下顎の変異を修正し関節に掛かる異常な力を除去するのが治療の第一段階として必須だと思います。

術後のCT画像

術後CT画像

左上7にインプラント埋入を行い、下顎の一番後ろの奥歯(7番)のインプラント上部構造と緩和しています。
このことによって右側と同じように、第二大臼歯までバーティカルストップ(この場合、噛みしめたときに左側の上下の顎間隔距離が縮まずに関節を刺激しない状態になります)。
さらに、この上からマウスピースを入れ、嚙み合わせの調整を続けています。

術後の顎関節CT画像の矢状断面

術後矢状断面

右側の皮質骨の再生を認めます。
右噛み咀嚼だけでなく、左側の一番後ろの奥歯まで噛めるようになったので右側への変異が修正されたと思われます。

術後の顎関節CT画像の前頭断面

術後前頭断面

右側は初診時にはなかった皮質骨の再生が認めます。
左側の前頭断面の画像より、関節上部にあった骨棘が消失しているのがみられます。
一方、関節頭内側上部に米粒大の遊離骨片がみられ、初診時に写っていた骨棘の先が取れたものだと考えられます。
このことにより左で噛んだ際の痛みが消失しました。

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